相場が大きく下がったとき、NISA口座を開くのが怖くなった経験はありませんか。「こんなときに売ったら損じゃないか」——その直感は半分正しくて、半分は思い込みです。実際の数字で見ると、暴落時の取り崩しが思っているほど致命的ではないケースも多い。今回はその根拠を具体的に示します。
暴落時にNISAを取り崩すと、実際にいくら損するのか
2,000万円の資産を月10万円ずつ取り崩すとします。通常時は1口1万円なら毎月10口売却ですが、暴落時(30%下落・1口7,000円)は同じ10万円を得るために約14.3口売却することになります。相場が回復したとき、余分に売ってしまった4.3口分の回復益は手に入りません。これを「シーケンス・オブ・リターン・リスク(順序リスク)」と呼び、取り崩し開始直後に暴落が来るほど資産寿命への影響が大きくなります。
過去の暴落と回復までの期間
| 暴落 | 下落率 | 回復までの期間 |
|---|---|---|
| リーマンショック(2008年) | 約50〜57% | 約4〜5年 |
| コロナショック(2020年) | 約30〜32% | 約6ヶ月 |
| チャイナショック(2015年) | 約20〜26% | 約1年 |
| ITバブル崩壊(2000〜2003年) | 約50% | 約5〜7年 |
重要なのは「回復したのは保有し続けた人だけ」という点です。暴落時に売った人は回復の恩恵を受けられません。取り崩し中の人は「暴落時でも生活できる現金の手当て」が必要になります。
暴落に備えるための3つの準備
① 生活防衛資金を確保する(最重要)
月25万円の生活費なら300〜600万円(12〜24ヶ月分)を現金として確保します。この現金があるだけで、リーマンショック級の暴落(回復まで約5年)でも売らずに待てる計算になります。「生活防衛資金はNISAの2,000万円とは別に置く」という発想が重要です。
② 取り崩し額のルールを事前に決めておく
- 通常時:月10万円を定額取り崩し
- 暴落時(直近高値から20%以上下落):取り崩し額を月5万円に減らし、残り5万円は生活防衛資金から補填
- 暴落時(直近高値から30%以上下落):取り崩しを一時停止し、生活防衛資金のみで生活
このルールを「相場が良いときに」決めておくことがポイントです。暴落の最中に決めようとすると感情に左右されます。
③ 暴落は一時的と理解しておく
過去の暴落はすべて回復しています。「永続的な暴落」は過去に起きていません。この事実を頭に入れておくだけで、暴落時の冷静さが大きく変わります。
書き留めよう: 「暴落時の取り崩しルール」を今日中に紙かメモアプリに書いておいてください。通常時・20%下落時・30%下落時、それぞれ自分はどう動くか。相場が落ち着いているうちに決めておくことが、暴落時の冷静さを支えます。
暴落が来たときの具体的な行動フロー
- まず何もしない(売却ボタンに手をかけない)
- 生活防衛資金の残高を確認する(6ヶ月以上あればすぐに取り崩す必要はない)
- 取り崩し額を事前のルール通りに減らすか停止する
- 回復を待つ(相場が回復したら通常の取り崩しに戻す)
まとめ:暴落時こそ事前準備が資産を守る
- 暴落時の取り崩しは「同じ金額を得るために多くの口数を売る」ため資産寿命が縮まる
- 取り崩し開始直後の暴落が最もダメージが大きい(シーケンス・オブ・リターン・リスク)
- 過去の主な暴落はすべて回復している。コロナは約6ヶ月、リーマンは約5年
- 生活防衛資金(生活費の12〜24ヶ月分・300〜600万円)があれば暴落時でもNISAを売らずに待てる
- 暴落時の取り崩しルールを「相場が良いときに」事前に決めておく
暴落のたびにルールを変えないこと——これが一番難しくて、一番大事だと実感しています。

54歳・会社員。旧NISAから積み立てを続け、気づけば定年まであと数年というタイミングに。いざ取り崩しを考えた時に「出口の情報がない」と気づく。金融庁や証券会社の公開資料をもとに、定年前後の普通の会社員目線で出口戦略を発信しています。


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