60代に入ってから「そろそろ使わないといけないな」と思い始めた方、多いと思います。ただ、実際に動こうとすると、どこから手をつければいいのかわからない。積み立てるときと違って、出口には「決まったやり方」がないのが悩ましいところです。今回は60代に絞って、具体的な数字とパターン別に解説します。
60代が出口戦略を考えるべき理由
60代は人生の中で最もお金の流れが変わる時期です。現役時代は給与収入があるため、多少の出費があっても補填できました。しかし定年退職後は収入源が年金のみになるケースがほとんどです。一方で生活費はすぐには下がりません。この「収入と支出のギャップ」を把握せずに感覚で取り崩していると、気づかないうちに資産が想定より早く減っていきます。
60代の出口戦略3つのパターン
パターン①:60歳定年退職と同時に取り崩し開始
60〜64歳の5年間は収入が大きく減ります。生活費月25万円なら5年間の取り崩し総額は25万円×60ヶ月=1,500万円になります。退職金がある方は退職金を先に使い、NISAはできるだけ長く運用し続けるのが賢明です。
パターン②:再雇用中は運用継続・65歳から取り崩し
60歳時点の資産2,000万円を年3%で5年間運用すると約2,319万円になります。差額319万円は何もしなくても生まれた差です。収入がある間に取り崩しを先延ばしにするだけで、老後に使えるお金が大きく増えます。
パターン③:退職金と組み合わせた戦略
正しい順番は「退職金(現金)→特定口座→NISA」です。NISA1,000万円を年3%で5年運用すると約1,159万円になります。順番を守るだけで159万円の差が生まれます。
60代の取り崩し額の目安
毎月の生活費 − 年金収入 = 毎月の取り崩し額
| 生活費 | 年金収入 | 毎月の取り崩し額 | 2,000万円が持つ年数(年3%運用) |
|---|---|---|---|
| 月20万円 | 月18万円 | 月2万円 | 事実上無限 |
| 月25万円 | 月15万円 | 月10万円 | 約24年 |
| 月28万円 | 月15万円 | 月13万円 | 約17年 |
| 月30万円 | 月15万円 | 月15万円 | 約14年 |
月13万円の取り崩しと月10万円の取り崩しでは、資産寿命に7年の差が出ます。生活費を月3万円抑えるだけで、老後の安心感が大きく変わります。
60代が押さえておくべき3つのポイント
① 相場が悪いときに慌てて売らない
コロナショック(2020年)では日経平均が約32%下落しましたが、約6ヶ月で元の水準を回復しました。生活防衛資金(生活費の6〜12ヶ月分)を現金で別に確保しておくことで、相場が悪いときでも売らずに待てる状況を作ることが重要です。
② 定額取り崩しか定率取り崩しかを決めておく
定額取り崩し(毎月一定額)は生活設計が立てやすいが相場が悪い時期に多く売ることになります。定率取り崩し(残高の一定割合)は資産が長持ちしやすいが月々の収入が安定しません。生活費の安定を優先するなら定額、資産の長持ちを優先するなら定率が向いています。
③ 医療費・介護費用を別枠で考えておく
厚生労働省のデータによると、一人当たりの平均介護費用は約500万円とされています。NISAの取り崩し計画とは別に、こうした大きな出費への備えを意識しておくことが60代の出口戦略では特に重要です。
まとめ:60代の出口戦略は「順番と数字」で決める
医療費・介護費用は取り崩し計画とは別枠で考える
収入と支出のギャップを計算し、毎月の取り崩し額を把握する
退職金がある場合は「退職金→特定口座→NISA」の順番で使う
再雇用で働ける間はNISAを取り崩さない。2,000万円が5年で約319万円増える
定額取り崩しか定率取り崩しかを事前に決めておく
生活防衛資金(生活費の6〜12ヶ月分)を現金で別に確保する
60代は「始める」より「整える」時期だと思っています。焦って全部売る必要はありません。

54歳・会社員。旧NISAから積み立てを続け、気づけば定年まであと数年というタイミングに。いざ取り崩しを考えた時に「出口の情報がない」と気づく。金融庁や証券会社の公開資料をもとに、定年前後の普通の会社員目線で出口戦略を発信しています。


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