NISAと貯金と退職金、全部ある。でも「どれから使えばいいのか」が全くわからない——定年前後になって初めてこの問題に気づく方がとても多いです。順番を間違えると、税負担が増えたり資産が早く底をついたりします。実際にどのくらい差が出るのか、具体的な金額で見ていきます。
なぜ取り崩す順番が重要なのか
老後の資産には主に3種類あります。現金・預金、特定口座(課税口座)の投資信託や株、そして新NISAの資産です。これらをどの順番で使うかによって、手元に残るお金の総額が数百万円単位で変わります。その理由は税金の扱いの違いにあります。特定口座は売却時に利益の約20.315%が税金として引かれますが、新NISAは売却時の利益が非課税(税金ゼロ)です。
取り崩す順番の基本ルール
正しい順番は「① 現金・預金 → ② 特定口座 → ③ 新NISA」です。退職金がある方は「退職金 → ① 現金・預金 → ② 特定口座 → ③ 新NISA」になります。
① 現金・預金から使う理由
現金や普通預金・定期預金は、置いておいてもほとんど増えません。2024年時点でメガバンクの普通預金金利は年0.02〜0.1%程度です。1,000万円を1年間預けても利息は2,000〜10,000円にしかなりません。一方でNISAや特定口座の資産は年3〜5%程度で運用が続いています。現金を先に使い、運用資産はできるだけ長く置いておく方が合理的です。
ただし生活防衛資金として生活費の6〜12ヶ月分(月25万円なら150〜300万円)は現金で手元に残しておきましょう。
② 特定口座を現金の次に取り崩す理由
特定口座とNISAそれぞれ1,000万円ずつ持っている場合、NISAを先に取り崩すと特定口座の運用益に約20%の税金がかかります。特定口座を先に取り崩せばNISAの1,000万円が5年間運用され約1,159万円になり、売却時の税金はゼロです。この差は約32万円になります。
特定口座に含み損がある場合は節税チャンス
特定口座にA投資信託50万円の利益・B投資信託30万円の損失がある場合、同じ年に両方を売却すると損益通算で課税対象は20万円になります。本来約10万円かかる税金が約4万円に減らせます。含み損のある資産は積極的に活用できる節税機会です。
③ 新NISAを最後に取り崩す理由
非課税メリットは運用期間に比例して大きくなります。
| 運用後の資産額 | 利益 | 特定口座(税引後) | NISA(非課税) | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| 1,100万円 | 100万円 | 約1,080万円 | 1,100万円 | 約20万円 |
| 1,200万円 | 200万円 | 約1,159万円 | 1,200万円 | 約41万円 |
| 1,500万円 | 500万円 | 約1,398万円 | 1,500万円 | 約102万円 |
| 2,000万円 | 1,000万円 | 約1,797万円 | 2,000万円 | 約203万円 |
1,000万円が2,000万円に増えた場合、特定口座では税引後約1,797万円にしかなりません。NISAなら2,000万円がそのまま手元に残ります。この差203万円は、順番を守るだけで生まれます。
退職金がある場合の取り崩し順番
退職金2,000万円がある場合、月25万円の生活費なら単純計算で約6年7ヶ月分に相当します。60歳で退職して退職金を先に使えば、66歳まではNISAに手をつけずに済む計算です。退職金の一部を再投資したい場合は、特定口座ではなくNISAの枠(年間360万円)に入れる方が税制上有利です。
やってみよう: 手持ちの資産を「現金・預金」「特定口座」「NISA」の3つに分類してメモしてみてください。それだけで取り崩しの順番が自然に見えてきます。
まとめ:取り崩し順番を守るだけで資産が長持ちする
- 基本の順番は「現金・預金 → 特定口座 → 新NISA」
- 退職金がある場合は「退職金 → 現金・預金 → 特定口座 → 新NISA」
- 現金を先に使う理由:運用していないため増えない
- 特定口座を先に使う理由:NISAの非課税運用期間を延ばすため。1,000万円が2倍になった場合の差は約203万円
- 特定口座に含み損がある場合は損益通算で節税できる
- NISAを最後に使う理由:非課税メリットは運用期間が長いほど大きくなる
順番ひとつでこれだけ差が出るなら、早めに知っておいて損はないと実感しています。

54歳・会社員。旧NISAから積み立てを続け、気づけば定年まであと数年というタイミングに。いざ取り崩しを考えた時に「出口の情報がない」と気づく。金融庁や証券会社の公開資料をもとに、定年前後の普通の会社員目線で出口戦略を発信しています。


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