退職金が振り込まれた翌月、「さて、NISAはどうしよう」と初めて真剣に考えました——そういう方が実は多いです。退職金もNISAも両方あるのに、どっちから使えばいいか誰も教えてくれない。今回は退職後の資産を無駄にしないための順番と、具体的なスケジュールを整理します。
定年退職後にNISAをどう使うかが老後を左右する
定年退職後の生活は現役時代と大きく変わります。毎月安定して入ってきた給与収入がなくなり、収入源は年金のみになるケースがほとんどです。しかし支出はすぐには減りません。この「収入と支出のギャップ」を計画なしに乗り切ろうとすると、相場が悪いタイミングで慌てて売却したり、気づいたら資産が想定より早く底をついたりするリスクがあります。
退職金とNISAの使い方の優先順位
正しい順番は「退職金(現金)→ 現金・預金 → 特定口座 → 新NISA」です。
退職金は現金のため置いておいても増えません。一方でNISAは年3〜5%程度で運用が続いています。退職金2,000万円・NISA1,000万円を持っている場合、退職金から先に使えばNISAの1,000万円が年3%で5年運用され約1,159万円になります。この差約159万円は、順番を守るだけで生まれます。
退職金の額別・取り崩しの考え方
退職金が多い場合(2,000万円以上)
月25万円の生活費なら退職金2,000万円だけで約6年7ヶ月分に相当します。60歳で退職すれば66歳まで退職金だけで生活でき、NISAには一切手をつけずに運用を続けられます。この間にNISAが年3%で運用されると1,000万円なら約1,194万円(6年後)に増えます。
退職金が少ない・ない場合
月10万円ずつ取り崩す場合のシミュレーション(2,000万円・年3%運用)は、60歳開始なら84歳ごろまで、65歳開始なら89歳ごろまで持ちます。開始を5年遅らせるだけで資産寿命が5年延びます。
年齢別・具体的な取り崩しスケジュール
60〜65歳:退職金と現金で乗り切る
この5年間はNISAに手をつけず運用を継続しましょう。NISAの1,000万円は年3%で5年間運用すると約1,159万円になります。「何もしない」ことが最善の戦略です。
65歳〜70歳:年金+必要な分だけNISAで補う
- 生活費25万円・年金15万円 → 毎月10万円をNISAから取り崩す
- 生活費25万円・年金20万円(70歳繰り下げ後) → 毎月5万円をNISAから取り崩す
年金を70歳まで繰り下げると月15万円が約21.3万円になります。65〜70歳の5年間を退職金や預金でまかないつつ、70歳からの取り崩し額を月10万円から月4万円に減らすという戦略は非常に有効です。
70歳以降:現金比率を少しずつ高める
医療費・介護費用など想定外の支出が増えてくる時期です。一人当たりの平均介護費用は約500万円(厚生労働省)とされています。NISAを計画的に取り崩しながら現金比率を少しずつ高めていきましょう。
定年退職前にやっておくべき3つの準備
① 年金見込み額の確認:ねんきんネットで65歳時点の年金見込み額を確認。5分でできます。
② 月々の生活費の把握:現在の支出から仕事関連の支出を除き、医療費を少し多めに見積もります。
③ 毎月の不足額の計算:生活費25万円・年金15万円なら不足額は月10万円。NISA2,000万円を年3%運用で取り崩した場合の資産寿命は約24年(84歳まで)。この計算を退職前に一度やっておくだけで、老後の不安は大きく軽減されます。
計算してみよう: 月々の生活費から年金見込み額を引いた「毎月の不足額」を出してみてください。その数字があるだけで、NISAをいくら・何年取り崩せばいいかが一気に具体的になります。
まとめ:定年退職の出口戦略は事前準備が9割
- 使う順番は「退職金→現金・預金→特定口座→新NISA」
- 退職金2,000万円・NISA1,000万円なら、順番を守るだけで約159万円の差が生まれる
- NISAの取り崩し開始を5年遅らせるだけで資産寿命が約5年延びる
- 年金繰り下げ(65歳→70歳)で月15万円が約21.3万円になり、取り崩し額を大幅に減らせる
- 退職前に「年金見込み額・生活費・毎月の不足額」の3つを計算しておく
退職金とNISAを「どちらかだけ」で考えようとするから迷うのであって、組み合わせで考えると答えが出やすくなります。

54歳・会社員。旧NISAから積み立てを続け、気づけば定年まであと数年というタイミングに。いざ取り崩しを考えた時に「出口の情報がない」と気づく。金融庁や証券会社の公開資料をもとに、定年前後の普通の会社員目線で出口戦略を発信しています。


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